ある島の言い伝え
世界がまだ泥のように混沌としていたころ
その泥の中から最初に動き出したのが龍であった
秩序といえるものなど何も無く
龍たちは情動のおもむくがままに暴れまわっていた
あるものは炎を吐き あるものは嵐を呼び
「世界」は喧騒と怒号にあふれていた
やがて・・・砂浜の砂粒の数ほどの
気の遠くなるような月日が過ぎ去り
生き残ったわずかばかりの龍たちは
それでも争いを止める気配も見せずに
傷つき疲弊した体でにらみ合っていた
しかし すでにそのころ海の中では
新しい生命(イノチ)が生まれていた
妖精である
さらに・・・砂浜の砂粒の数ほどの
気の遠くなるような月日が過ぎ去り
海から陸にあがってきた妖精は
不思議な歌を龍たちに聞かせることができた
年老いても
いっこうに静まる気配を見せない龍たちだったが
その歌を聞いたとたん
またたくまに深い眠りに落ちていった
龍が深い眠りに落ちて・・・
砂浜の砂粒の数ほどの月日が過ぎ去り
ようやくこの島が生まれた
そしてこの島の中央に高くそびえる山には
荒々しい龍が未だに眠りつづけているという
深い眠りの中で
夢を見続けているという
どんな夢なのか
いつ目覚めるのか・・・だれも知らない
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